「え、越前??」
自分の手首を掴んだまま立ち上がると、前に立って歩き出したリョーマに不二は目を瞬いた。
 「ねぇ、どこ行くの!?」
店を出ても掴んだ手を離さず、ずんずんと進んでいく背中に声をかけるが、返事はない。
 「ちょっと!越前ってば!!」
自分に背中を向けたまま目をあわせようとしないリョーマに不二は眉をひそめる。
 「・・・もしかして昼間からそんなつもりじゃないよね?」
掴まれている腕に力を込め、ぐい、と引っ張り返せば、その歩みは止まり、ようやくリョーマが振り返った。
 「・・・そんなつもりだったらどうなんすか?」
 「・・・君ねぇ・・・」
拗ねたような瞳を向けるリョーマにため息をついて、不二はそんな彼を軽く睨む。
 「今日はデートがしたい、ってリクエストしたんだけどな?」
 「・・・ベッドの上だって二人きりっす。」
 「越前。」
性急なリョーマの言動に少し呆れつつ、不二がたしなめるようにそう言えば、彼はぷい、と視線をそらし、小さくため息をついた。
 「・・・オレだって・・・」
 「え?」
 「オレだってこんなのカッコ悪いと思ってる。でも・・・」
・・・この人はオレの気持ちをちっともわかってない。
軽く目を見張って自分を見つめる不二に、リョーマは愛しさと同時に軽い苛立ちを覚える。
こんなに近くにいるのに、こんなに思っているのに、この人が掴めない。
この人が自分のものであると感じられるのは、肌を寄せ合っている時だけで。
 早くこの人を腕に抱きたい。そしてこの焦りを鎮めたい。 
この人はオレの、オレだけのものだって感じたい・・・
 「・・・あんたが悪いんだからね。先輩。」
 「え・・・あ!」
考えているよりも行動だ。
自分の言葉に戸惑っている不二を尻目に、再び歩き出すべくきびすを返した途端、前から歩いてきた人に勢いよくぶつかったリョーマは不意のことに大きくよろめいた・・・